
PROJECTSTORY
食品製造設備分野
02
えぐみ、湿度…若き技術者たちが挑んだ、
野菜の低温調理機開発
食品製造において、豚まんなどを大量生産するための「蒸し機」でその名を知られている滝川工業。その技術を応用して根菜類をはじめとする『野菜の低温調理機』の開発依頼が寄せられたのだが、実はまったく前例のなかった開発だった…。技術者がいかにして壁を乗り越えて きたか、挑戦の繰り返しとなった開発ストーリーを紹介します。

1991年新卒入社
技術部 機械技術課
Kさん

2019年新卒入社
技術部 機械技術課
Aさん
いきなり“まさか”の連続で、何 度も窮地に追い込まれた

『蒸しボックス』という蒸し器の業務用機械で多くの実績を上げてきた私たちに、根菜類を中心とする野菜の低温調理機をつくることはできないか、と依頼があったのが2021年末のこと。野菜を低温で調理した際にえぐみが出てしまうという課題をクリアしたいといった内容でした。当時は低温調理機のカテゴリーはなく、まったくゼロからのスタート。当初は『蒸しボックスの温度帯を調整すればできるだろう』と、割と軽い気持ちで考えていました。
ところが実際に温度を下げようと蒸気を止めると、湿度まで下がってしまい野菜にうまく熱を与えられないことが判明しました。それならお湯を沸かした際に出る蒸気でカバーしようとしたのですが、今度は調理に必要な蒸気の量が減って蒸し具合が安定しないという状況に。予想に反して、いきなり失敗を繰り返すというスタートから開発がはじまったんです。
繰り返すように発生する課題を、社内のチームワークで解決
最初の失敗は湿度計や糖度計を使用することで、何とか低温で蒸した野菜のえぐみを取ることに成功。そこからようやく本格的な製品開発へと移ることができました。まずは蒸しボックス本体の横に湯気(蒸気)をつくる箱を設置し、ダクトでつなぐ構造に改修。ところがダクトから湯気を送る際、途中で結露が発生して温度が下がってしまう事案が発生しました。そこで蒸しボックスと一体化させる方式に変更し、いくつものパターンによる実験を通じてベストな方法を見つけ出しました。
様々な課題をクリアしてこられたのは、私たち機械設計の担当者だけではなく、電気設計や製造担当の協力があったおかげでした。制御ソフトの変更、試作品の製造などは私たちだけではできません。同じフロアにいくつもの部署があり、工場も併設されている、この滝川工業の環境があってこそ実現できたのだと思います。

まだ終わりじゃない。これからも、若き技術者たちの挑戦は続く

実はこの案件を担当したのは、入社3年目時点でのこと。一つの機械をまるごと設計することを任されたのは、このプロジェクトが初めてだったんです。案件の規模は決して大きくないものでしたし、数多くの大型機械を製造する滝川工業において比較的小さな機械での開発でした。とはいえ企画の段階から納品まですべての工程に携わり、最後までやり切れたことは大きな経験であり、これからのキャリアに向けての自信になりました。
このプロジェクトには後日談があるのですが、コンビニにも商品展開する大手食品メーカーがこの低温調理機を使って豚まんを蒸しあげたところ、これまでの製品とはまったく違うふっくらとした食感があるとの評価を獲得。まだこれからの段階ですが、主力製品である連続式の蒸し器への応用や製品化に取り組みたいとも考えているところです。


