
PROJECTSTORY
製鉄設備分野
01
長年の”課題”に技術で応える
〜Mねじり結束機の開発ストーリー
鉄製品をワイヤーで束ねる『結束機』で、業界トップクラスのシェアを誇る滝川工業。しかし束ねてねじったワイヤーの先端が鋭利となるため、作業員が怪我をしたり配送用トラックのシートを破いたりしてしまう課題を抱えていました。この課題に対し、技術者がどのように向き合 い、解決したのか…そのストーリーを紹介します。

2001年新卒入社
技術部 機械技術課
Mさん

1994年新卒入社
技術部 機械技術課
Mさん
もっと安全にできないか…の声を受けてスタートした『Mねじり』

『結束機で結んでねじったワイヤーの先で怪我をした、シートが破損した』という話は、以前からお客様の声としていただいていました。これはワイヤーの先端がY字のような、外側に飛び出た状態になることで運搬作業中に先端が引っかかったり、被せたシートを突き破ったりしてしまうためでした。その問題を解消する技術として、『Mねじり』の開発がスタートしました。
『Mねじり』とはワイヤーの先端を内側に曲がった、M字の状態にする技術のことです。それだけを聞くと「先端を曲げるだけで解決するのでは?」と思うかもしれませんが、実は先端だけを後から曲げるのは技術的に非常に困難で、ワイヤーをねじる段階からMの字を形づくらないと結束できません。ですので、開発にあたっては小手先ではなく、ねじりの構造を根本 から見直すところからスタートしたのです。
木製試作機の製作から、時間をかけての試行錯誤が始まった
構造をつくるにあたっては、まず木製の試作機をつくって、柔らかな針金をワイヤーに見立てながらM字でねじれるかどうか検証するところから始めました。そこでうまく形ができるようになってから、はじめて鉄製の試作機をつくって実際のテストへと進めていきました。実はまだこの時点では自社内での研究開発を行うという段階で、そこから長い時間をかけて試行錯誤を繰り返していったのです。
お客様からお金をいただいて”製品”をつくる段階に入ってからは、今まで以上に品質向上に力を入れるようになります。ねじりを行うヘッド部分は複雑な3次元形状をしているのですが、それを自分たちで研削工具を使ってミリ単位で調整。さらにワイヤーを結んで結束する際の回転スピードや角度、ねじった後の細かな動作ではコンマ何秒という単位で調整を繰り返していきました。

「もう一台、納品したい」の言葉ですべての苦労が報われた

製品化で最も力を入れたのは、結束作業の”品質”です。結束は1日に何百回と作業を行うのですが、たった一度失敗するだけでライン全体が停止してしまうのです。そのため 出荷前には1台400〜500回連続で結束テストを実施し、一度も失敗しない機械のみお客様先へ納品する社内基準を設定。今でも微妙な設定変更を行えば、また一からテストをやり直すようにしています。結束テストでは製造部にも協力してもらい、最後までやり切ることができました。
プロジェクト期間はおよそ2〜3年。チームで試行錯誤を繰り返しながら、数多くの課題を乗り越えていくプロセスは大きな学びとなりました。何よりも嬉しかったのは、お客様から「トラブルもなく、すごく良いですね」とお褒めの言葉をいただいた時。最近では「もう一台、納品できないか」との依頼も受けるなど、このプロジェクトに挑戦して本当によかったと思います。


